令和6年能登半島地震調査

 本研究室では,2024年1月1日に発生した能登半島地震の被害調査を複数回行っております.
 今回の地震でお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに,被災された方々に心よりお見舞い申し上げます.

 本研究室では,2004年の中越地震で被災した経験から,地震初動調査の重要性を認識し,これらの成果を地盤災害のメカニズム解明,減災対策検討に活用すべく積極的な活動を続けております.地域住民,民間企業,他研究機関の民様におかれましては,本研究室の日頃の調査・研究活動にご協力を賜り感謝申し上げます.

 地震発生後は,直ちに道路防災ドクターを務める豊田教授が上越市国道8号線茶屋ヶ原地先の斜面崩壊現場に出向き,崩壊土砂の状態確認と土のサンプリングを行いました.その後は,余り報道はされていないが,2007年中越沖地震で大きな地盤被害を受けたということで,新潟市,石川・富山方面よりも先に柏崎市,刈羽村を中心に被害調査を行うことになりました.それ以降は,豊田教授が地盤工学会調査団の液状化主査を任命されたこともあり,順次,液状化被害の顕著だった地域に足を運びました.調査ルート,写真等は調査マップにまとめてあります.

調査の様子(1月2,19日)

  • 本震発生後直ちに,道路防災ドクターを務める豊田教授が北陸地方整備局の要請を受けて国道8号線上越市茶屋ヶ原地先の斜面崩壊現場に行きました.そこで,シルト岩と思われる崩落土砂を2つ採取し,室内において粒度・密度試験,スレーキング試験を行いました.定量的な評価は,ここでは避けますが,水浸後の供試体が写真のようにすぐさま崩壊したことを考えると,非常に脆弱な地盤で構成された斜面だったことが推測されます.


    A01.jpgA02.jpgA03.jpgA04.jpg
    崩壊斜面の様子崩壊斜面の様子サンプリング試料土粒子の密度試験

    A05.jpgA06.jpgA07.jpgA08.jpg
    粒度試験スレーキング前スレーキング後崩壊土砂除去の様子

調査の様子(1月5日)

  • 本研究室が中越エリアにあるので,被害が大きかった石川,富山,新潟市よりも先に2007年中越沖地震で被害が見られた,刈羽村稲葉地区,柏崎市橋場町,松波,山本団地,鯖石川記念公園を中心に調査を行いました.調査ルート,噴砂採取地点,他の写真等は調査マップにまとめてあります.
  • 刈羽村稲葉地区(LINK)では,荒浜砂丘縁辺部で側方流動を伴った液状化により,多くの家屋で被害が発生しましたが,今回の地震では全く被害が発生していませんでした.
  • 柏崎市橋場町(LINK)では,鯖石川旧河道を埋め立てた地盤において,小規模な噴砂や,道路,建物の亀裂が発生していました.中越沖地震では,旧河道と現地盤の境界で大きな亀裂や段差が生じた箇所では,軽微な道路の亀裂発生程度で大きな変状は確認できませんでした.旧河道西側のエリアでは,2004年,2007年に液状化による噴砂が発生した箇所があり,ここでは,今回の地震で再度液状化による噴砂が発生しました.住民の証言によると,再再再液状化により,車庫の外壁と床面のクラックがさらに進展したとのことでした.
  • 柏崎市松波(LINK),鯖石川記念公園(LINK)では,当時,大規模な噴砂が発生していましたが,刈羽同様,今回の地震では全く被害が発生していませんでした.
  • 柏崎市山本(LINK)は,刈羽村と似たような被害が発生し,宅地耐震化推進事業により,地下水を低下させる工事を行っています.今回の地震では,全く被害が発生していませんでした.近隣で液状化被害が発生したわけではないので,直接比較できないため,断言はできませんが,液状化のメカニズムに大きく関係する地下水対策は,恒常的な対策工として有用であることが示唆されました.


    B01.jpgB02.jpgB03.jpgB04.jpg
    刈羽村荒浜砂丘縁辺橋場町旧河道上噴砂の様子小規模噴砂の様子

    B05.jpgB06.jpgB07.jpgB08.jpg
    噴砂の様子(木の周り)車庫内のクラック進展(左写真建物)クリーンセンターかしわざき松波の様子

調査の様子(1月15日)

  • 1月5日の調査中に豊田教授が調査団の液状化部門主査に選出されたため,急遽,新潟市を調査することになりました.今回は,新潟大学の金澤准教授と保坂助教のアテンドで,新潟市西区と中央区を中心に調査してきました.調査ルート,噴砂採取地点,他の写真等は調査マップにまとめてあります.
  • 新潟市西区善久では,住宅地の至る所で噴砂が発生し,建物の傾斜や沈下が発生していました.国道8号線と平行に走る市道では,道路沿いに西側では隆起,東側では側方移動による開口部が見られました.体感的には勾配が小さいエリアでしたが,市道も横断方向に勾配が付いており,液状化による側方流動 の可能性が考えられました.国道8号へ接続する県道2号線の橋梁基礎フーチングにもクラック,噴砂が発生し,一部で段差が生じていました.
  • 西区寺尾では,砂丘縁辺部で噴砂,道路の亀裂,舗装の浮き上がり,建物の沈下や傾斜等が発生していました.これら被害は,砂丘沿いに広範囲に発生していました.より詳細な調査が必要があると思われます.
  • 中央区川岸町では,被害は限定的ですが,住宅地において噴砂や建物の傾斜が発生していました.1964年の新潟地震では甚大な液状化被害が発生したエリアになるため,60年経過して再度液状化が発生したことになります.


    C01.jpgC02.jpgC03.jpgC04.jpg
    西区善久住宅の傾斜西区善久大量の噴砂西区善久道路の側方移動西区西郵便局の沈下

    C05.jpgC06.jpgC07.jpgC08.jpg
    西区寺尾住宅の傾斜・噴砂西区寺尾舗装のめくれ中央区川岸町住宅の傾斜・噴砂新潟市体育館の噴砂

調査の様子(1月17日)

  • 1月5日に続いて,刈羽村刈羽地区を中心に調査を行いました.調査ルート,噴砂採取地点,他の写真等は調査マップにまとめてあります.
  • 被害の大半は地震動による揺すり込み沈下でした.一部,建物外周に沿って埋め戻し土の噴砂が確認されましたが,建物に大きな変状をもたらす程のものではありませんでした.それ以外では,道路の隆起,亀裂等の比較的軽微な変状がありましたが,調査日当日は大分復旧が進んでいました.
  • プラント5では,同様に建物周辺地盤の沈下が発生しておりました.この建物は,中越地震,中越沖地震と何度も被害を受け,立て直しや補修工事を行ってきましたが,今回の地震でもまたもや被害が発生しました.


    E01.jpgE02.jpgE03.jpgE04.jpg
    建物周辺地盤の沈下側溝の押し出しによるずれ公園内の灯篭の倒壊建物周辺に発生した噴砂

    E05.jpgE06.jpgE07.jpgE08.jpg
    建物周辺地盤の沈下建物周辺地盤の沈下電柱の傾斜建物周辺地盤の沈下

調査の様子(2月1日)

  • 発災後ちょうど1か月後の2月1~3日に石川・富山方面を行いました.初日は移動日ということで,糸魚川で途中下車して駅前中央地区を調査しました.また,3日に合流する予定の東京電機大学安田名誉教授の依頼で,青海地区北陸道トンネル出口付近鉱さい集積場跡地も調査しました.調査ルート,噴砂採取地点,他の写真等は調査マップにまとめてあります.
  • 駅前中央地区では,被害が限定的でしたが,住宅敷地内で噴砂が発生している箇所,建物の周辺地盤が沈下している箇所が散見されました.建物の被害は確認できませんでした.
  • 日が完全に暮れた状態で,青海地区北陸道トンネル出口付近を調査しましたが,ライトで照らした感じでは,噴砂や変状等の被害は見られませんでした.この地は,北陸道建設時に耐震性を考慮して,盛土構造物とせずに,橋梁構造物にした経緯から,鉱さい跡地が液状化により変状を起こす可能性が考えられたとのことでした.


    D01.jpgD02.jpgD03.jpgD04.jpg
    糸魚川市中央地区住宅の噴砂糸魚川市中央地区マンションの沈下糸魚川市中央地区住宅の噴砂糸魚川市青海鉱さい集積場跡地

調査の様子(2月2日)

  • 二日目は氷見市の沿岸から海沿いに北上して輪島市に至るまでの間を調査しました.
  • 氷見市では,砂丘堆積物の地盤で構成された地域を中心に広域的な液状化被害が発生していました.道の駅では,駐車場や建物周辺で激しい噴砂が発生していましたが,建物が大きく傾斜している感じではありませんでした.一方で,周辺の住宅地では,住宅が大きく傾斜して,倒壊している箇所も散見されました.また,比較的古い木造家屋が完全に倒壊している箇所があり,液状化地盤でも建物が倒壊する可能性があることが分かりました.
  • 七尾市の沿岸では,氷見市同様に道の駅で広域的な液状化が発生していました.一部敷地内の不等沈下による傾斜した建物がありましたが,被害は限定的でした.一方で,海沿いでは護岸エプロン部の亀裂,護岸躯体の海側への移動等の被害が確認されました.
  • 穴水町由比ヶ丘では,比較的大規模な斜面崩壊が発生し,建物が数棟倒壊していました.崩壊土砂は粘性土質っぽい土が主体で,低地側に大きく流れ,道路を閉塞していました.崩壊箇所の近くでは,1か所だけマンホールが浮き上がったところがあり,埋め戻し土の液状化も同時に発生した可能性が考えられました.
  • 珠洲市,輪島市ともに震源に近いため,瓦葺で古い建物の倒壊が至る所で発生していました.液状化による噴砂は小規模ながら確認できましたが,主に埋め戻し土が吹き上がったと予想されます.輪島市河井町では,各種報道でも報じられてましたが,大規模な広域火災の焼け跡が残されてました.焼け落ちたものが多くあり,地盤被害の痕跡を探すことはできませんでした.


    F01.jpgF02.jpgF03.jpgF04.jpg
    氷見市北大町道の駅大規模噴砂氷見市中央町道路の沈下・亀裂七尾市矢田新町道路の噴砂七尾市矢田新町護岸の移動

    F05.jpgF06.jpgF07.jpgF08.jpg
    穴水町由比ヶ丘斜面崩壊穴水町由比ヶ丘マンホール浮き上り珠洲市正院町マンホール浮き上り珠洲市正院町建物の倒壊

    F09.jpgF10.jpgF11.jpgF12.jpg
    珠洲市正院町建物周辺の噴砂輪島市河井町ビルの倒壊輪島市河井町マンホール浮き上り輪島市河井町大規模火災

調査の様子(2月3日)

  • 三日目は東京電機大学安田名誉教授と合流して,富山県高岡市伏木地区の液状化,石川県河北郡内灘町,かほく市の県道8号線沿いを中心に,液状化による側方流動の被害状況を調査しました.
  • 高岡市伏木地区では,比較的広域で液状化による噴砂,側溝の圧縮,建物の傾斜が発生していました.氷見と七尾同様に海沿いで,標高差が少ない平坦な地域でしたので,側方流動による建物傾斜や地盤の隆起はあまり確認できませんでした.
  • 内灘町西荒屋,室,かほく市大崎では,県道8号線沿い(約7キロ)に西側の砂丘側から,低地側となる東側の河北潟に向かって側方流動が広域的に発生した.県道のお陰で,流動は堰き止められたと見られ,県道沿いに地盤の隆起,道路のめくれ,ブロック塀の倒壊が多数確認された.一方で,高地側の砂丘近くでは流動に伴って地割れが多数発生していることが分かった.この傾向は,内灘町西荒屋,室,宮坂,かほく市大崎で顕著に発生していた.これらと被害が相対的に小さな地区との差は不明確で合った.西荒屋,室では一部の低地側で県道を飛び越えて被害が発生している箇所も散見された.これも同様に他との差異は不明確であった.この中で,改良体が露出した家屋が確認されたが,側方流動の深度が表層付近の浅い深度で発生したことが伺い知れた.改良体が露出した建物は,不幸中の幸いで傾斜を免れていたが,内灘町内の明らかに築年数が浅い建物にも傾斜が発生しており,一概に地盤改良が液状化に対して有効的であるとは言い切れないことが分かった.


    G01.jpgG02.jpgG03.jpgG04.jpg
    高岡市伏木錦町建物傾斜高岡市伏木錦町空地の噴砂内灘町西荒屋県道沿いの側方流動内灘町西荒屋小グラウンド亀裂

    G05.jpgG06.jpgG07.jpgG08.jpg
    内灘町西荒屋児童公園の地割れ内灘町室の噴砂と建物傾斜内灘町西荒屋県道の湧水かほく市大崎の側方流動と地割れ

    G09.jpgG10.jpgG11.jpgG12.jpg
    内灘町室の側方流動と改良体露出内灘町室の側方流動と河道閉塞内灘町鶴ヶ丘駐車場舗装のめくれ内灘町鶴ヶ丘建物傾斜と噴砂

調査の様子(3月13,14日)

  • 前回の踏査で液状化被害が甚大であった石川県河北郡内灘町を中心に,より詳細な調査を行いました.今回は,本研究室修了の鳥取大学の中村准教授に加わって頂き,LiDarを用いた三次元測量とGNSS+RTKによる精密な測位システムを駆使し,側方流動の規模を立体的に捉えることを行いました.また,実被害を大まかに分類して,GISでマッピングするための詳細調査を同時並行で行いました.滞在時間が限られていましたので,被害が顕著だった西荒屋地区,室地区,鶴ヶ丘地区に絞って実施しました.


    H01.jpgH02.jpgH03.jpgH04.jpg
    LiDarによるエリアマップ生成RTK+GNSSによる測位内灘町西荒屋畑内の地割れ内灘町西荒屋道路宅地内の噴砂

    H05.jpgH06.jpgH07.jpgH08.jpg
    内灘町西荒屋マンホールの湧水内灘町宮坂空地の地割れ内灘町鶴ヶ丘建物傾斜と噴砂内灘町鶴ヶ丘宅地内の噴砂

調査の様子(3月31日)

調査の様子(4月1,2日)

能登半島地震調査報告

調査マップ

調査マップ(踏査ルート,写真,被災内容,噴砂採取地等をまとました)※マップ左上のナビバーをクリックして下さい

添付ファイル: fileX05.jpg 226件 [詳細] fileX04.jpg 224件 [詳細] fileX03.jpg 279件 [詳細] fileX02.jpg 269件 [詳細] fileX01.jpg 275件 [詳細] fileH08.jpg 312件 [詳細] fileH07.jpg 337件 [詳細] fileH06.jpg 332件 [詳細] fileH05.jpg 322件 [詳細] fileH04.jpg 313件 [詳細] fileH03.jpg 308件 [詳細] fileH02.jpg 322件 [詳細] fileH01.jpg 334件 [詳細] fileG12.jpg 308件 [詳細] fileG11.jpg 328件 [詳細] fileG10.jpg 314件 [詳細] fileG09.jpg 361件 [詳細] fileG08.jpg 295件 [詳細] fileG07.jpg 311件 [詳細] fileG06.jpg 340件 [詳細] fileG05.jpg 347件 [詳細] fileG04.jpg 309件 [詳細] fileG03.jpg 322件 [詳細] fileG02.jpg 329件 [詳細] fileG01.jpg 319件 [詳細] fileF12.jpg 350件 [詳細] fileF11.jpg 335件 [詳細] fileF10.jpg 357件 [詳細] fileF09.jpg 359件 [詳細] fileF08.jpg 359件 [詳細] fileF07.jpg 347件 [詳細] fileF06.jpg 345件 [詳細] fileF05.jpg 346件 [詳細] fileF04.jpg 353件 [詳細] fileF03.jpg 337件 [詳細] fileF02.jpg 344件 [詳細] fileF01.jpg 348件 [詳細] fileE08.jpg 332件 [詳細] fileE07.jpg 342件 [詳細] fileE06.jpg 331件 [詳細] fileE05.jpg 384件 [詳細] fileE04.jpg 326件 [詳細] fileE03.jpg 330件 [詳細] fileE02.jpg 346件 [詳細] fileE01.jpg 333件 [詳細] fileD04.jpg 337件 [詳細] fileD03.jpg 349件 [詳細] fileD02.jpg 335件 [詳細] fileD01.jpg 328件 [詳細] fileC08.jpg 381件 [詳細] fileC07.jpg 363件 [詳細] fileC06.jpg 369件 [詳細] fileC04.jpg 355件 [詳細] fileC05.jpg 376件 [詳細] fileC03.jpg 367件 [詳細] fileC02.jpg 376件 [詳細] fileC01.jpg 367件 [詳細] fileB08.jpg 372件 [詳細] fileB07.jpg 365件 [詳細] fileB06.jpg 377件 [詳細] fileB05.jpg 376件 [詳細] fileB04.jpg 359件 [詳細] fileB03.jpg 374件 [詳細] fileB02.jpg 376件 [詳細] fileB01.jpg 359件 [詳細] fileA08.jpg 479件 [詳細] fileA07.jpg 441件 [詳細] fileA06.jpg 439件 [詳細] fileA05.jpg 452件 [詳細] fileA04.jpg 456件 [詳細] fileA03.jpg 456件 [詳細] fileA02.jpg 458件 [詳細] fileA01.jpg 453件 [詳細]

トップ   編集 凍結 添付 名前変更   新規 一覧   最終更新のRSS