中空ねじりせん断試験装置レストアプロジェクト

 2023年4月から本専攻地震工学研究室 [LINK] 助教として,志賀先生が東大生研から赴任されました.その際に,とあるT大学から不動になった「中空ねじりせん断試験装置」を頂いて来ました.東大生研の清田研在籍時は,中空も使いながら研究されていたということで,本学においてもやりたいと熱望されておりました.そこで,サプライヤーの誠研舎亡き後,無謀ながら一からレストアして復活を試みようという企画をはじめました.三軸試験装置レストアに続く第二弾です.研究で使用できる試験装置に復元してみせます「じっちゃんの名にかけて」.コスト調達の問題があるので,何年かかるか分かりませんが,気長にコツコツと作業したいと思います.以下に示す作業内容は,備忘録としてだけではなく,これから試験機の整備を考えている方々に向けて,ノウハウを少しだけお裾分けしたいと考えてます.更新は不定期,いきなりの仕様変更,掲載は順不同ですので,予めご了承ください.土質試験一筋29年高田職員より

 継手やその他交換部品は,大多数がモノタロウやミスミ,エア抜きプラグ,圧力室内用供試体排水経路チューブ継手等の専門的な部品は誠研舎のフォロワーである濱田電機 [LINK],圧力計は東洋計器興業 [LINK],バルブおよび水経路用継手はSwagelok [LINK],レギュレーターはFairchild [LINK],一次圧用レギュレーターおよびエアーフィルターはアズビルTACO[LINK],アクリルははざいや [LINK] から調達しました.残念ながら,図面は誠研舎が廃棄してしまったので,交換部品を作製する場合は,全てリバースエンジニアリングによって,自分で作図しないといけません.そのため,最低限,三次元CADと機械製図の知識は必須となります.今回のプロジェクトでは,時間短縮と利便性を考慮して,三次元モデルをWEBページに放り込むと,自動で見積りから発注まで行ってくれる「ミスミMeviy」[LINK] を多用しました.また,制御盤の板金・塗装は全てのシステムが完成して,試験ができるようになってから改めて考えるとして,錆止めや目隠し等.必要最低限の処置に留めることとします.

 プロジェクト初年度の2023年度は,レストアコンセプトの決定と寸法の洗い出し,いわゆるリバースエンジニアリングが主な作業となります.この作業では,志賀先生とコミュニケーションを多めに取って,クライアントとの意思疎通を図り,ミスマッチが無いように務めました.リバースエンジニアリングには,三次元CAD「Solidworks」を使用しましたが,3Dモデルを作成するだけの悶々とする作業を永遠に行うことになりました.その甲斐あってか分かりませんが,出来上がったモデルを大画面上に映して,グリグリしながら細部構造を確認,対話する様が,さながらF1マシンのメカニックマンのような気分でした.

 2024年度の整備の流れと方針ですが,制御盤は,すでに稼働している2台に備わっている機能をそのままコピーしたいと考えております.問題は真空槽,脱気水槽,給水槽が無いので,一から作らなければならないことです.2024年度は,志賀先生の予算と相談しながら制御盤完成を最優先として整備したいと思います.その後は,圧力室の整備となりますが,内圧,外圧の制御と供試体内側,外側の体積変化測定をどうしたいかで予算と工程が大きく変わってくるので,必要最小限から対応したいと思います.制御系統については,制御盤同様にコピーアンドペーストで済ますつもりですので,余力があればやりたいと思ってます.本プロジェクト最大のハードルは回転角計を一から作らないといけないことです.まずは情報収集というところでしょうか.

納品の様子

  • 2022年9月15日,T大学から大きなお届け物を納品しました.ラップでグルグル巻きになってましたが,開けてみると,載荷装置はどっかで見たタイプでした.トルク伝達機構がちょっと違うかもしれませんが,恐らく,本研究室の初代と同年代に製造された載荷装置だと思います.
  • 載荷試験装置は,ラックandピニオン形式でしたが,モーターが付いてませんでした.初代のDCモータを移植できるか,検討が必要です.
  • 外部変位計の支柱に青錆び(図3)が発生していました.真鍮製の丸鋼をニッケルクロムメッキしたものと推測できます.磨いて再生は不可能と判断し,これはSUS304に置き換えます.
  • 垂直力載荷軸のボールスプラインが初代と同じものでした.この部分はそのまま移植できそうです.モータブラケットは異なる大きさなので,交換が必要かな.
  • 給水槽が付いていたであろう一次圧供給用制御盤(図6)は不要なので,トラップを抜いて,このままポイです.
  • この制御BOX(図7)は繰返し三軸試験機と兼用していたようです.本研究室では,荷重制御はしないので,これも必要な部分を除いて,同様にポイです.
     
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    1.載荷装置の様子2.心配そうな池田教授3.外部変位計の支柱錆びてます4.プチプチに包まった圧力室

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    5.給水槽付いて無かった6.制御装置は使えんな7.これは再利用します

分解の様子

  • 2024年4月9日,不用になった一次圧供給用制御盤を分解して廃棄する準備を行いました.分解作業は,回収業者に嫌がれないように,アルミ,鉄,ステンレス,真鍮,プラ等材質ごとに細かく分別できるまで行います.
  • 継手類は青錆が進行してましたので,もったいないですが,ポイしました.
  • エアフィルタ(図10)は,制御盤に設置されていなかったので,分解清掃して再利用します.
  • 2024年6月7日,上記作業の続きで,荷重制御用BOXを分解しました.
  • 残ったものは,渦電流式変位計GAP-Sensorのアンプ1個と誠試工製の動ひずみアンプ1個でした.細かい事ですが,なんで,誠研舎製のBOXに,後者が混じっているのかが最大の謎として残りました.まさに水と油,交わることが無いはずなのに,理由を知る術はありませんが・・・.
     
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    8.この子らはバラバラにされます9.継手もバラバラです10.残ったものは再利用です11.裏のハッチが無くなりました

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    12.残すは下半分です13.ほとんど残りませんでした

載荷装置編

 載荷装置の反力フレームは,採寸の結果,読み通り,本研究室初代装置と同型のものでした.そこで,装置上物をそっくり初代と交換移植することを考えました.そうすることにより,制御プログラムや電動レギュレーター内臓のセル圧(外圧)や背圧載荷装置もそのまま使用できることになります.装置下物は清掃と一部部品交換程度ですので,倉庫に眠っていた初代を復活させるだけで,試験装置の要である載荷・制御の部分を超低コストでレストアすることができます.

下準備

  • 2023年12月5日,載荷装置の反力フレームをバラバラに分解しました.稀に,はめあいがシビアな場合があるので,支柱の位置は元あった場所に戻せるようにマークすることが大切です.
  • 2023年12月18日,載荷装置の清掃を行いました.使用した道具は,キムタオル,スクレーパー,ガムテープはがし液(図2)です.ちなみに,キムタオルは4枚重ねになってますので,面倒ですが,1枚1枚分けて使用したほうが拭きやすいです.
  • 装置についた汚れを落とす,と言っても,劣化したガムテープの貼り跡は,最大の敵です.この場合は「ガムテープはがし液」(図5)が効果的.油臭い臭いがありますが,キレイにベタベタしたノリを除去できます.これがあるからケーブルを束ねる時はテープ類はなるべく使用しないほうが良いです.
  • 4本の支柱はフレームに建てて作業しました.
     
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    1.分解された部品達2.使用した道具3.清掃後の様子4.テープのノリ痕はがし,最悪です

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    5.現代文明の力,はがし液6.載荷装置下物清掃後の様子

載荷装置マウントベース加工

  • 載荷装置上物に関しては,初代装置が実装できるかを,三次元CAD(図7)内でモデルを作成して,組立ができるかを検討しました.その結果,垂直方向のベアリングAssyが,無加工でそのまま載ることが判明し,載荷装置マウントベースを一部追加工することで,全てを実装できることが分かりました.とてもラッキーな結果でしたが,1個1個部品を実寸で3Dモデル化しないといけないので,多くの時間を費やしました・・・.
  • 2024年4月10日,トルク用モータブラケットやラックギアマウントの設置場所が新旧で異なるので,載荷装置マウントベースに追加工を施しました.それらの座ぐり穴開け箇所を確保することが困難でしたので,ベースの前後をひっくり返して使用することとしました.これに伴って,外部変位計用支柱の取り付け穴も反対側に加工しました.加工は精度を要求するので,マシニングセンターで行うために,本学工作センターに委託しました.なお,加工用の図面(図8)はこちらで用意しました.
  • さすがにマシニングで加工しただけあって,とてもきれいな仕上がりです.念のため,図10のように,トルク関連の装置を地上で仮組して,マウントベースに納まるか確認しました.
     
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    7.三次元CADによる検討8.設計図面9.追加工後のベースの様子10.仮組の様子

載荷装置モータ・ジャッキ設置

  • 2024年4月13日,載荷装置モータ・ジャッキ類を設置しました.前述のマウントベースは地震研の学生に手伝ってもらって設置済みです.まずは垂直力載荷用ジャッキ設置用の柱と梁を設置(図11)しました.その後はギアボックスの設置を行います.とは言っても,この作業が最も過酷なもので,天井スレスレの位置にギアボックスを置かないといけません.一人で実施しましたが,今考えると無謀だったと思います.今回は,写真では見切れてますが,退役の電空レギュレーターBOXを踏み台にして,ピストンをせっせと出して,ボックス本体を持ち上げて,梁にネジ留めする方法で固定しました.ピストンを全開したので腕がパンパンになりました.重量物設置作業は複数人で行いましょう.
  • 垂直力およびトルクの物理ストッパー用スイッチ(図12)は,試験装置の保護に最も役立つものなので,載荷ストロークに応じて適正な位置に設置します.最初は,直ぐに効くような,キツメな位置に設置するほうが良いです.
  • 垂直方向のベアリングAssy,ラックandピニオンギアボックスともに,精度の高い追加工のお陰で,マウントベースにピタッと納める事ができました.本来は,固定用のボルト穴の公差を厳し目に設定したい所ですが,万が一はまらないことを考えるとゾッとするので,少し甘めに設定してあります.その分,しっかりトルクをかけてボルトを締めておきます.
     
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    11.垂直力載荷用ジャッキ設置12.垂直力載荷用ストッパー設置13.垂直力載荷用電磁クラッチ設置14.垂直力載荷用モータ設置

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    15.垂直力載荷用主軸設置16.トルク載荷用モータ・ジャッキ設置

モータコントローラー設置

  • 2024年7月3日,モータコントローラー設置作業を行いました.コントローラーは実験者の操作性を考慮して,4本の反力フレーム支柱に設置します.ここで大きな問題が発生しました.図17の支柱用のブラケットが1台分しか無いことに気づきました.色々探しましたが,類似のものは見つけることができませんでした.恐らくワンオフ加工品だと思います.切削品ではなくて板金物なので,図面書いたり,小ロット品を受けてくれる外注先を探す必要があり,かなり面倒になります.そこで,1台分を半分に分けて,不足分を3Dプリンタで作製することとしました.
  • 3Dプリンタ用のフィラメントは,エンジニアリングプラスチックの中からABSよりも安定性に定評があるASAを選択しました.印刷時の設定が難しいですけどね・・・.剛性を上げるために肉厚に設計したつもりでしたが,甘かったです.図20のように設置はできましたが,少しフニャフニャな感じになっていました.時間ができたら,またやり直したいです.
     
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    17.ブラケットもはや貴重な存在かも18.3Dプリンタで複製中19.ネジ穴タップ加工20.モータコントローラー設置

外部変位計用支柱の交換

  • 2024年7月11日,注文していた外部変位計用支柱が届いたので,設置作業を行いました.はじめに,支柱取付用のブラケットの磨き作業を行いました.錆がメッキの上に浮いていたので,本来は作り直したかったのですが,コスト縮減のため磨きだけで済ませました.そもそも変位計ターゲット設置には影響を与えない部品ですが,見た目がアレなもので・・・.
  • 手磨き作業で使用した道具は,キムタオルと伝家の宝刀ピカール(図22)です.浮き錆は置いておいて,それ以外は予想以上にピカピカになりました.
  • 新調した支柱は,割高ですが,錆びのことを考えてSUS304製にしました.特に,長岡は湿度が高いので,ほっとくと直ぐに錆が浮いてきます.それと,変位計ターゲットの上下動作が渋いと,細やかな設置作業ができない(ストレスになる)ので,硬質クロムメッキを施してあります.なお,硬度の指定は不要ですので,焼きは入れてません.
     
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    21.支柱取付用ブラケット22.手磨きの様子23.磨き後の様子24.新品の支柱納品

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    25.外部変位計26.支柱設置完了

測定・制御系編

 初代中空ねじりせん断試験装置のモータ・ジャッキ移植が完了したので,測定・制御系を整備しました.まずは動かす事を目的に,豊田教授が作成したプレーンなプログラム,静的データロガー,D/A変換ボードを使用してシステムを構築したいと思います.

PCラックの組立てとPC,データロガーの接続

  • 2024年5月20日,PCラックの組立てと垂直力,トルク用モータの動作確認まで一気に行いました.
  • PCラックは,データロガーや重量のある電動レギュレーターBOXを搭載する必要から,いつもサンワサプライ製の高耐荷重仕様 [LINK] のものを選択してます.特に,棚板にパンチ穴が開いているので,インシュロックタイで固定が容易で,地震時の飛び出しを防げる点が大きいです.
  • 制御プログラムはVB6.0で作成してあるので,OSインストール時はバージョンに合わせてランタイムライブラリーを同時にインストールします.これで,過去の遺産を使い続けることができます.問題は,I/O関係のIFボードのドライバーサポートと規格です.垂直力,トルクともに比較的古いタイプのDCサーボモータですので,制御信号としてアナログを使用します.そのため,I/Oとしては,D/Aボードが必要となります.もし,最新のWindowsにドライバーが対応できなくなるとジエンドになります.また,本研究室で所有するのものは,全てPCIバス仕様のもので,ほとんどのPCでPCI-Expressが採用されており,拡張ボードを実装できない状況です.つまり,D/AボードをPCI-Express仕様に変更するとすると,制御プログラム中の制御コマンド(API関数)を新しいものに合わせて,刷新する必要が生じ,途方もない更新作業を強いられることになります.教授はこれをものすごく嫌がってます・・・.ハード,ソフトともに,現代の潮流に合わせてマメに対応しないと,直ぐに試験装置がゴミ化するのは困りものです.そこで,本研究室では,横着な研究者の強力な味方である,ライザーカードをPCに導入し,PCIバスをPCI-Express経由で動かすことを行ってます.
  • 本来はContec製の拡張シャーシを使いたいところですが,今回の整備ではコスト縮減のため,市販のライザーカードを使用しました.
  • 使用したデータロガーは共和電業製のUCAMです.イーサネット通信出始めの機種なので,A/D変換ボードが不要で,スイッチングハブを1個挟めば直ぐに測定できるのは楽ですね.ただし,静的なロガーなので,早い実験はできませんが・・・.
  • 長年倉庫で眠ってましたが,動作確認の結果,各モータのSTOP,CW(時計回り),CCW(反時計回り),回転数変化,リミットON,リミットOFF,クラッチON,クラッチOFFが一発でクリアーしました.さすが,誠研舎のものはガッチリしてます.
     
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    1.PCラックの組立て2.制御用PCにOSをインストール3.インターフェースボード設置4.PCラックにPCやロガーを設置

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    5.制御信号ケーブル接続と動作確認

制御盤編

 制御盤は使えるところがほとんど有りませんでしたので,やり直しに近いです.三軸試験装置レストア時のように,板金塗装を行いたいところですが,時間短縮の意味で,この作業は後回しにします.交換部品の再設置は,なるべく他の制御盤とレイアウトを合わせて使用性を揃えるようにしたいと思ってます.体積計,供試体上下排水経路をまとめたブロック,本研究室では通称Cブロックが盤面に存在してましたので,制御盤素体は活かせると思います.問題は,レギュレータ設置位置が低い位置に来るので,二重負圧の操作がやり難くなる事です.しゃがんで精密な操作をすることになるので,若く無いとできません.
 残念ながら,脱気水槽,真空槽,給水槽は完全に新規作製が必要です.また,各圧力ゲージは旧単位系でしたので,これも新調する必要があります.それと,バルブは使えなそうなので,全て交換が必要なんですが,銅素材の価格高騰の影響で,ステンレス製のバルブの方が安いというあべこべの現象が起きてます.ところで,今回のバルブ全交換代金だけで,昔の制御盤1台買える価格にまで物価が高騰してました.土質実験を手放したくなる気持ちが良く分かります・・・.

下準備

  • 2024年4月20日,制御盤から不要なものを除去する作業を行いました.とは言っても,バルブ,圧力ゲージ,エアフィルタ,ビュレット等全部ですけど.
  • 供試体排水量測定用のビュレットは,コストダウン目的で,オーバーホールする程度で,差圧計を付けたまま使用したいと思います.てか,いつのものか不明な水が残ってました・・・.
  • 圧力ゲージは前述の通りで,全てポイです.特に,当時のマスターゲージが馬鹿デカいので,拡張プレートを自作して,新しいものを埋め込む必要があります.
  • バルーンは使用しないので,今回はオミットします.一方で,重要な下部背圧槽は,上下の蓋が真鍮にクロムメッキしたものなので,すでに錆び錆びになってました.今回は,この蓋部分だけリバースエンジニアリングで図面を起して,ステンレス(SUS304)製のものに置き換えようと思います.
     
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    1.作業前の様子2.無駄なもんを除去した後の様子3.ビュレットに水が残ってる4.余計な表示は全て除去

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    5.外された子たち6.クリーニングを待つ子たち

レギュレーターオーバーホール

  • 2024年2月27日,レギュレーターのオーバーホール作業を行いました.下準備編で残ったものを,分解,清掃して再利用したいと思います.今回は2個オーバーホールしましたが,いずれもFairchild製モデル10,正圧用のレギュレーターです.これらはセル水供給用の調圧弁として利用する予定です.
  • これまでの経験から,本体内部は,水の逆流が起きてるか,長岡のように湿度が高くて結露しているか,大体,錆びていることが多いです.また,経年で,二つのハウジングの間にあるゴム製パッキンが固着して分解が困難になるパターンが多いです.案の定,この二つも同様のことが起きてました.精密マイナスドライバーとプラスチックハンマーを用いて,パッキンを傷めないようにして殻割を行うと図14のように錆び錆びになってました.
  • 電動リューターに軸付ミニカップワイヤーを取り付けて,図16のように錆びを落としていきます.インナーバルブがある中央の円筒箇所は,しつこく錆び落としを行うと,はめあい公差が狂うので,ほどほどにします.鉄さび,アルミの白錆びを全て落としたら,交換部品を取り付けて,殻を元に戻します.たまに,レギュレーターのノブのおねじ,めねじがスッテンテンになっていることがあるので,最後に動作確認します.
  • 交換部品は,レギュレーター心臓部のインナーバルブAssy(図17右)と,シートリングAssy(図17左)の二種類です.部品交換だけで元の性能にもどるので,コスト縮減に貢献してくれます.
     
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    14.ハウジング殻割15.インナーバルブ周りの分解16.錆び落とし17.インナーバルブ交換部品

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    18.オーバーホール後

下部排水経路ブロックオーバーホール

  • 2024年8月21日,制御盤下端部にある排水経路ブロックのオーバーホール作業を行いました.このブロックは,セル水用給水槽,下部背圧槽,体積計から不要になった水を集約して外部に排出する時のターミナルになるので,縁の下の力持ち的な部品です.元の制御盤には,2か所設置されてましたが,1つはポイして,1つはピカピカにして復活させたいと思います.
  • 作業前の状態は汚れや錆で再利用したくない雰囲気でしたが,真鍮製ですので,丁寧に磨き作業を行えば,外見を新品に戻すことができます.まずは,レギュレーター同様,カップワイヤーで大まかに汚れを落とします.その後は,伝家の宝刀「ピカール」でひたすら磨くだけです.
  • 内ネジ部の汚れやシールテープ残骸を除去するには,タップを立てると楽です.PT1/4のタップで地金を削るか削らないかの所まで回転させます.
  • 内部ポートは閉塞がある場合はツイストドリルで貫通し直しますが,今回はこれが無かったので省略します.新しいチューブソケット,ニードルバルブを取り付けて完成です.
     
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    19.元の状態,正直キチャナイ20.取り外し後の状態21.錆び落としの様子22.タップ立て直し

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    23.オーバーホール後101.制御盤下端部に取付完了

キャスター取付

  • 2024年7月3日,制御盤にキャスターが無かったので,部品を調達して設置しました.キャスターは,経年で床を傷つけることを嫌がって,ゴム製では無くて,ナイロン樹脂製のものを選択しました.
  • 制御盤を横向きにおいて,キャスター取付ボルト設置個所をケガキ用デジタルノギスでケガキました.このノギスは秀逸な道具で,ノギスの片側のジョーに超硬チップが埋め込まれているので,1/100mmの精度で,測定とケガキを同時に行うことができる優れものです.余談ですが,新潟県の大学ですので地域貢献という意味を込めて,作業用道具はなるべく燕三条製のもので揃えてます.
  • ケガキ後は,ポンチ作業で精度を落としたくないので,これまた超硬チップが先端に付いたオートポンチで一発撃ちしてます.
  • キリ穴は,センタードリルから始まり,少しづつ径をを大きくして,キャスター取付ボルト径+1mmの大きさまで開けます.ドリルはハンドドリルです.10mm径以上のツイストドリルを使用する場合は,チャックはそのままで,10mmストレートシャンクのノス型ドリルに切り替えて作業を行います.
  • キリ穴貫通後はキャスターを組み込み,座金,ナットで締結します.後々のことを考えて,使用するものはユニクロ製のものではなくて,ケチらずSUS製を使用します.この場合,キャスター側の六角部分の掴みしろが薄いことが多いので,極薄のモンキーレンチまたはスパナがあると便利です.
     
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    7.新調したキャスター8.使用した道具です9.使用したツイストドリル10.ケガキ作業

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    11.ポンチ作業12.ドリルでキリ穴加工13.キャスター取り付け後の様子

空圧供給ワンタッチポート取付

  • 2024年7月4日,制御盤側面にある空圧供給および切替のためのワンタッチポート設置作業を行いました.このポートは,パネルユニオンを介して,日東工器㈱製のワンタッチカプラーとチューブソケットが接続される構造になります.まずは,パネルユニオン用の20mm穴を制御盤側面に開けていきます.比較的精度が求められる加工ですので,今回は,アトラエースを用いました.
  • この加工では,制御盤の肉厚が薄いので,図27のように厚さ10mm以上の鉄板を裏側から当てた状態で,磁力をONにする必要があります.この当て板が無いと,磁力が負けて本体が浮いてしまいますので,安全上必須事項です.ちなみに,アトラが過負荷で止まった場合は,磁力がOFFになり,鉄板が落下しますので,落ちても良いように養生しておくと良いです.
  • 穴開け箇所にケガキを行い,オートポンチでポンチングを行います.その後は,センタードリルで下穴を開けて,一気にメタルホールソーで目標の大きさの穴を開けます.最後は,カウンターシンクでバリ取りを行い,パーツクリーナーで掃除して終わりです.
  • メタルホールソーは一回で大穴が開けれるので,大変便利な工具ですが,ツイストドリルとは異なり,切削加工に近い使い方をしますので,タッピングオイル(図25右)を定期的に塗布したほうが良いです.
     
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    24.今回の主役のアトラエース25.使用した道具です26.アトラ設置の様子27.鉄板裏当ての様子

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    28.センタードリルから29.メタルホールソーへ30.バリ取りの様子
     
  • 2024年10月10日,ワンタッチポートの組立てと制御盤への取付作業を行いました.
  • 見た目にも影響を与えるので,なるべく継手が傷付かないように配慮しながら作業を行います.オスワンタッチカプラー,1/8-1/4異径ソケット,パネルユニオン,チューブソケット(ストレート,エルボー,サービスティーの三種)を連結させます.
  • シールテープの巻き方は,多方面で紹介されてますので割愛します.ちなみに,ここでは二回巻きで止めてあります.巻き過ぎた状態でテーパーねじをねじ込み過ぎると,オスカプラーを壊すことがあるので,ほどほどです.
  • 継手の組込みは,樹脂製のバイスタッチ(図34青緑色部品)を使用して傷付きを防いだ状態のバイスを使用して,しっかりと行います.ナットの六面は合わせておくと良いです.なぜならば,位置がずれている場合は,緩んだことを意味するので,事後の緩み確認がし易くなるからです.
  • 完成後のワンタッチポートを制御盤に組み込む際は,前述の穴開け箇所の錆止め塗装を行います.説明は別の場所で合わせて行います.
  • シンフレックス(ナイロン)チューブの切断は,図37のように専用の工具を用いた方がキレイにできます.
     
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    31.使用した道具です32.新品の継手達33.シールテープ巻付け後34.継手の組込み

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    35.完成後のワンタッチポート達36.制御盤側面に固定37.分岐用のチューブ切断38.分岐用チューブ設置の様子

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    39.空圧切替部の取付完了40.空圧供給部の取付完了

スライド空圧供給レギュレーター取付

  • 2024年10月15日,圧力室底盤スライド空圧用供給レギュレーターを制御盤に取付けました.スライド空圧は,いわゆるエアーホッケーゲームの要領で,重量が大きくなる圧力室を空気の力で持ち上げて,少ない力で前後移動できるようにする便利設備のことです.これが無いと,かならずと言っていいほど,床面と底盤の摩擦の影響で,ビビリ振動が発生して,緩い砂供試体は密になる問題が発生します.
  • アズビルTACO製のミニレギュレーターとゲージを組み立てて,継手類を設置(図42)します.更に,前述のパネルユニオンとチューブソケットを接続して,制御盤に取り付けます.
     
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    41.新品レギュレーターとゲージ納品42.継手を組み込んだ状態43.制御盤に取付完了

真空槽・脱気水槽取付

  • 2024年10月18日,真空槽および脱気水槽の組立てと制御盤への取付作業を行いました.
  • 真空槽および脱気水槽のパイプ部分は,直径120mm,長さ490mm,厚さ5mmのキャスト材を調達しました.パイプ径が大きく,手持ちの旋盤では端面処理できないので,先端処理は調達と同時に納入業者に行ってもらいました.処理方法は,両面ともにカンナ仕上げです.調達後直ちに,上下端面内径を1/100mm単位で測定して,アクリル上板(蓋部分です)と底板の設計に取り掛かります.
  • アクリル底板は,パイプ内に接着固定する関係で,はめあいギリギリの寸法かつマイナス公差で設計(図47)します.接着は,図51のように,アクリル専用の接着剤を用いて全周に行き渡るように塗布します.さらさらな液体なので,塗布というよりは,流し込むイメージです.はじめは,思いのほか多くの接着剤が流れてポタポタになるので,かなり焦りました.適当な端材を用いて練習することをお薦めします.問題は,この接着剤の揮発速度が爆速なので,短時間で作業しなければならないことです.接着剤がはみ出た所は,完全に乾いた状態で,3000番の紙やすりとプラスチック用コンパウンドでキレイに除去できます.
  • 継手類の組込みは,ねじ込む力を見ながら慎重に行います.余りしつこく締めるとアクリルが割れるので,ほどほどにします.
  • 水漏れの確認を行い,制御盤上部に真空槽および脱気水槽を取付けた後,真空グリースを塗布したアクリル上板をはめ込みます.
     
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    44.新品の方々45.アクリル上板設計図面46.アクリル底板設計図47.使用した道具です

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    48.シールテープ巻付け後49.アクリル上板に継手組込み50.アクリル上板完成51.アクリル底板の接着

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    52.接着剤乾燥待ち53.アクリル底板に継手組込み54.水漏れ確認,問題無し55.真空グリースの塗布

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    56.アクリル上板取付57.真空槽・脱気水槽取付完了

真空槽排水経路・脱気水給水経路取付

  • 2024年10月29日,真空槽排水経路,脱気水給水経路の入口部分のバルブ・継手取付作業を行いました.
  • 両者は,制御盤下端部から制御盤天面に設置してある真空槽,脱気水槽に繋がる給排水径路の入口にあたる部分になります.接続されるチューブが長くなるので,経路は制御盤表から通して,裏側に抜けないと見た目が悪くなります.そのため,「空圧供給ワンタッチポート取付」に登場したパネルユニオンを用いて径路を貫通させる処理を行います.他の試験装置の制御盤を参考に穴開け箇所をけがいて,ハンドドリルとアトラで穴を開け,穴開け箇所側面の錆止め塗装を行います.なお,穴開けは後述の一次圧用のエアフィルターの分も合わせて行いました.
  • 錆止めは三軸試験装置のレストアを行ったときに使用した塗料の残りを使用しました.塗料は一液性ウレタン製のものを主剤として,重量比で塗料用シンナーを10%混ぜたものを面相筆で塗布し,三,四日自然乾燥させました.制御盤メインパネル用塗料の色は,廃業前に誠研舎からお聞きした灰青緑(マンセル値7.5BG7/1.5)に近いものを選択しています.
  • 図89は給排水径路を制御盤に取り付けた様子です.左側が真空槽に誤って逆流した水を排水するための口,右側が脱気水槽に蒸留水を給水する口になります.ちなみに,両者ともに見た目が一緒ですが,給水は真空ポンプを用いて吸い込む仕様なので,口元はストップバルブ程度で済んでしまいます.写真では同じレバー式のバルブを配置してありますが,この後,エアーフィルターを設置した時にハンドルが干渉したので,左側のみ別のものに変更しておきました.
     
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    84.穴開け箇所のケガキ作業85.穴開け後の様子86.穴開け箇所の錆止め塗装87.新品の方々

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    88.継手組込み後の様子89.給排水径路取付完了

圧力ゲージ取付

  • 2024年9月19日,マスターゲージ,真空圧ゲージ,セル圧供給用正圧ゲージを制御盤に取り付けました.
  • マスターゲージは,セル圧,背圧を確認するためのもので,ゲージ下部に設置する予定のバルブで切替えながら使用します.このゲージは,水圧計のキャリブレーション測定にも使用するため,他のものよりも精度の高いものを使用します.大きさは200φ,容量は0~1MPa,精度は0.5%F.S(等級),デザイン重視で中ツバタイプを選択してます.本来は全て黒ベゼルで統一したいところですが,仕様でゲージの縁だけシルバーになってます.
    • 以前付いていたゲージは,古くてとても大きなものでしたので,購入したマスターゲージを取付けることができませんでした.そこで,図58のようなゲージアダプターを自作して,これを介して取付けることとしました.ゲージアダプターは2.5mm厚のステンレス板を加工したものです.時間を優先して,しばらくは未塗装状態で使用します.
    • 圧力ゲージ用メスジョイント G1/2x1/4NPT(図61左)は,ゲージ裏に付いているオスジョイントとチューブ継手を変換するために設置しました.なお,継手からの漏気を防ぐために,オスメスジョイント間には,テフロン製のパッキン(図61下)を挟み込むようにしましょう.図では,オスジョイントねじ部にシールテープを巻いてますが,平行ねじなので,効果は余りありません.気休め程度です.
  • 真空圧ゲージは,供試体内と供試体外の負圧を確認するためのものです.大きさは100φ,容量は0~-0.1MPa,精度は1.6%F.S(等級),中ツバタイプです.
    • 真空圧ゲージもマスターゲージと同様に,メスジョイント,チューブ継手,パッキンを使用して制御盤に取付けていきます.
  • 写真に出てきませんが,セル圧供給用正圧ゲージは,圧力セル内にセル水を送るための圧縮圧を確認するためのものです.大きさは100φ,容量は0~1MPa,精度は1.6%F.S(等級),中ツバタイプです.
     
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    58.マスターゲージアダプター取付59.アダプター設計図面60.マスターゲージの取付61.マスターゲージ用の継手達

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    62.オスジョイント側の準備63.継手組込み64.真空圧ゲージと継手達65.シールテープ巻付け後

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    66.制御盤への取付67.真空ゲージ取付完了

マスターゲージ切替バルブ取付

  • 2024年10月28日,マスターゲージ(MG)切替用バルブの取付作業を行いました.
  • MG切替用バルブは,5方(五方弁)に接続口があるもので,供試体外圧,供試体内圧,背圧,大気圧に切り替えて接続することができます.これにより1個のマスターゲージだけで,各圧力の大きさをバルブを切り替えて確認することができるようになります.ちなみに,制御盤内で唯一このバルブだけハンドルを360度回すことができます.今回調達したものは,図68のように銀色に輝くステンレス製のものです.空気,水の流体しか取り扱わないので,本来は継手と合わせて真鍮製を購入したかったのですが,「制御盤編」冒頭でも触れましたが,昨今の世界情勢を受けて,何と真鍮製の方が高かったので,ステンレス製を選択することになりました.とは言え,円安,物価高の影響で滅茶苦茶高かったです・・・.
  • 樹脂製のハンドルはインチサイズの留めネジで留まっているので,登場シーンは少ないですが,インチサイズ六角レンチ(図69中最右)が必要になります.
     
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    68.新品の方々69.使用した道具です70.継手組込み後の様子71.MG切替バルブ取付完了

下部背圧槽取付

  • 2024年10月29日,下部背圧槽の取付作業を行いました.
  • 下部背圧槽は,二重負圧下で供試体内を通水飽和する際,供試体上端から下端に向けて通過した水が排水される場所になります.また,脱水過程(加圧板法による不飽和化)では,関連するバルブを切り替えて,ここから正圧を供試体上部に載荷することになります.つまり,真空圧と正圧が載荷される場所になるので,漏気や水漏れが無いように正確な組立,設置作業が求められます.
  • 元々付いていたものは,ニッケルクロム+真鍮の上板と底板で構成されていたので,図76のように,錆が進行して使い物にならないと判断し,ステンレス製のものに置き換えることとしました.一方で,アクリルパイプ,ブラケット,上板,底板固定用のシャフト等は磨いて再利用します.オーリングは新品と交換です.
  • 下部背圧槽底板には,排水用のバルブ(三方弁)を設置する必要があります.Swagelok製のバルブは気密性,耐久性,使用性が高いので重宝しますが,NPTねじしかラインナップしていません.チューブ継手をSwagelok製のフェルールタイプのものにすればどうでも良いことですが,今回は,コストダウンを目的に,スリーブ式のものを取付けます.取り付ける際は,NPT1/4めすねじにR1/4を無理やりねじ込むことは可能ですが,シールテープが効かないので,代わりに二液性の接着剤を塗布してネジかみ合わせ部の隙間を埋める処理を行います.接着剤は継手を組み込んだ時にムニュっと盛り上がる(図80)くらいたっぷりと塗布すると良いです.
     
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    72.ブラケット,シャフト磨き73.アクリルも磨いて再生74.下部背圧槽上板設計図75.下部背圧槽底板設計図

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    76.下部背圧槽上板,底板新旧比較77.下部背圧槽底板部品78.使用した道具です79.接着剤の塗布作業

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    80.継手組込み後の様子81.バルブ完成品82.アクリルにグリスを塗布83.下部背圧槽取付完了

エアーフィルター取付

  • 2024年11月5日,エアーフィルター(制御盤表用,裏用)取付作業を行いました.
  • エアーフィルターは,コンプレッサーから送られてくる圧縮空気を,ルーバーデフレクター(図90中の波波しているところ)で旋回させ,その際に生まれるサイクロン効果で水滴を分離するものです.長岡は湿度が高いので,制御盤表側に設置した一次圧用のものは,本来の目的の通り,圧縮空気の飽和水蒸気を分離するために設置します.夏場はここがいつもすぎことになります.一方で,制御盤裏側に設置したものは,試験機トラブル,人為的ミス等で逆流した水がレギュレーター内に流れ込むことを防ぐことが目的になります.
  • 今回は「分解の様子」の項で確保したフィルターと手持ち在庫を合わせた5個用意しました.フィルタードレーンは「オート式」,「マニュアル式」とありますが,トラブルの元になるので,前者を選択してます.また,ドレンの口金は,金属製のものは錆びて劣化するので,必ず樹脂製のものを選択することがコツです.
  • フィルターの継手部はハンドタップを用いて,余計なゴミや前回使用時に残ったシールテープ等を掃除しました.水を一時的に溜めるためのボウルはプラスチック用のコンパウンドで汚れをこすり落としました.
  • フィルターを設置する際は,本体上面に記載されているエアーインの向きに注意しなければなりません.逆向きに設置すると前述の効果が全く得られません .
  • エアーフィルターは,レギュレーターやルブリケータ―とセットで使用することが一般的です.ルブリケータ―は不要ですので,フィルターとレギュレーターを組にして配管するようにしましょう.本プロジェクトでは,図94のものを一次圧用,図93の右側から順に,セル水給水圧用,外圧用,内圧用,背圧用としてそれぞれ配管してあります.なお,外圧,内圧,背圧は,「PCラックの組立てとPC,データロガーの接続編」で登場した電動レギュレーターBOXのことを意味します.
     
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    90.フィルター部品と使用した道具91.フィルターと新品継手達92.継手組込み後の様子93.制御盤裏側取付完了

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    94.制御盤表側取付完了

レギュレーター取付

  • 2024年11月8日,一次圧用,セル水給水用,真空圧載荷用の各種レギュレーターの取付作業を行いました.セル水用は「レギュレーターオーバーホール編」でオーバーホールしたものになります.
  • 真空圧用のレギュレーターは「Fairchild製モデル16」を採用しています.他社製のものを一度試したことがありますが,リリースが早すぎる感じがありましたので,慎重に作業する必要がある二重負圧時工程に向かないと考えております.
     
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    95.一次圧用です96.継手組込み後の様子97.制御盤へ取付と配管完了98.セル水給水,真空圧載荷用です

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    99.継手組込み後の様子100.制御盤へ取付完了

給水槽取付

  • 2024年9月26日,セル水用給水槽取付用ブラケット溶接を行いました.
  • 冒頭でも述べた通り,この制御盤には給水槽が付いてませんでしたので,取付用のブラケットから製作する必要があります.
  • 取付用ブラケットは,L50x50x6-296のSS400材L型鋼(ノコ切断)を購入し,黒皮のまま用いました.溶接個所は黒皮をグラインダーで剥いだ後,制御盤に合わせながら長さを調整し,図111のように溶接しろ部分の切り欠き加工を行いました.最後に,防錆油やグラインダーでの研磨で付着したダストを落とすため,パーツクリーナーで掃除しました.
  • 制御盤の溶接個所は,取付箇所よりも少し大きい範囲を,グラインダーで研磨し,溶接しやすいように塗装を予め除去しました.また,スパーク不良にならないように,アーク溶接用のマイナスアース部分も同様に行いました.
  • L型鋼の仮止めは,溶接用マグネットホルダー(図113赤色の部品),適当なアルミアングルおよびシャコ万力を用いて行いました.仮止め後は,水平器で水平を確認しながら微調整を行いながら据付を行いました.
  • アーク溶接時はスパッタが飛び散りますので,合板等で広範囲に養生することをお薦め致します.床が少し焼けました・・・.ちなみに,溶接面は,被ったままで溶接前に手元がはっきり見える自動遮光型を用いてます.スパーク時に自動で遮光してくれる優れものです.
  • 溶接後は,ハンマーで叩いて,しっかり溶着しているか,脱落しないかを確認しました.
     
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    102.新品のL型鋼です103.使用した道具です104.まずは設置位置を決める105.塗装剥がし箇所の割出

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    106.塗装を剥いでます107.塗装剥がし終了108.ついでにマイナスアース部も109.油,研磨ダスト落とし中

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    110.長さ調整中111.溶接しろ用の切り欠き112.使用した道具です113.制御盤にL型鋼を仮止め

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    114.溶接作業の様子115.溶接後の様子,上手ではない・・・116.溶接部分の研磨
     
  • 2024年10月10日,給水槽取付用ブラケットの塗装を行いました.
  • 塗料に関する情報は前述 [LINK] の通りで,同様に一液性ウレタン製のものを使用しました.制御盤フレーム用塗料の色は,ライトブラウン(マンセル値2.5Y6/2)に近いものを選択しています.しばらく置いておいた影響で,塗料が図118のように盛大に分離しており,色味がおかしくなってました.そこで,樹脂製の撹拌棒でグルグルかき混ぜました.その結果,本来の色に戻りましたので,小瓶に移してから筆塗を想定して薄め液を加えました.
    • 今回は時間短縮を目的に,塗装はスプレーガンではなくて筆塗りを採用しました.塗料に薄め液を少し加えることで,筆ムラを抑えることができます.
  • L型鋼と制御盤フレームの溶接部が図115のように凸凹になったので,パテ埋めを行いました.そもそも,日常の溶接作業頻度が極端に少ないため,相変わらずへたくそなのですが,プロのようなキレイなビードができません.スパッタが飛びまくって凸凹に必ずなります.制御盤フレーム側の肉厚が薄いので,ビビッて溶棒を早めに送ってしまうことが原因です.こればっかりは経験ですかね.
    • 使用したパテは自動車板金用のものです.光硬化パテは,少ないですが,ひけが発生するので,多めに盛ることが良いです.盛る厚みが大きい場合は,複数回に分けてパテ埋めしないと硬化不良が起きますので,注意が必要です.なお,作業中はくれぐれも紫外線を直視しないようにしなければなりません.このパテは,硬化後の表面が少しべたつきますので,脱脂スプレーやラッカー系塗料用薄め液で拭き取れば,これを除去することができます.べたつきの除去後にグラインダーで表面を均して塗装すれば完成です.
       
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      117.使用した塗料,薄め液です118.かなり分離してました119.撹拌後の様子120.小瓶に移します

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      121.薄め液を加えます122.使用した道具です123.光硬化パテを練り混ぜ中124.段差に塗り込みます

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      125.紫外線照射中126.べたつきを除去します127.再度撹拌中128.筆塗塗装します

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      129.ついでに塗装130.乾燥後の様子
       
  • 2024年12月2日,給水槽本体の取付を行いました.
  • 新規追加の給水槽は,下部背圧槽と同様にSUS304製の上板,底板を用いることとしました.
    • 底板は下端部に給排水の継手がくるので,外径13mm,内径10mm,長さ60mmのスペーサーを挟んだ状態でブラケットに固定しました.
    • 底板固定用のボルトは,ブラケットにメスネジを直接立てた場所に固定されますが,精度を要求するので,図136のように,1/1のサイズで印刷した設計図面を両面テープで貼り付けて,穴開け位置を割り出すようにして狂いを抑えてます.ちなみに,ここで用いる両面テープは,なるべく接着力の弱いものにしないと,後始末が大変なことになります・・・.
    • メスネジのタップは,図137のようなガイドを使用すると,垂直に保ったままでネジ切りができるようになります.また,ハンドルはラチェット式だと持ち替える必要が無いので,楽に加工できます.ハンドタップ加工時はこのセットがお勧めです.当然ながら,加工中はタッピングオイルをタップに吹き付けてから作業してます.
       
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      131.全部新品の方達です132.給水槽上板設計図面133.給水槽底板設計図面134.上板継手類組込み後の様子

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      135.底板設置に使用した道具です136.1:1縮尺の図面を貼って位置出し137.ハンドタップ加工138.底板組込み後の様子

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      139.アクリルにグリスを塗布140.制御盤へ取付完了

排水経路,下部背圧槽,真空供給切替バルブ取付 New!!

  • 2024年11月19日,制御盤の心臓部である,排水経路,下部背圧槽用の切替バルブの取付を行いました.また,真空圧載荷用レギュレータとセットで使用する真空供給切替バルブ取付も同時に取付作業を行いました.
  • 排水経路用の切替バルブは,供試体の上下,脱気水供給,下部背圧槽への接続を自由に行うためのものです.これらがまとまったブロック(図148中右側,5つのバルブが連なっている場所)では,バルブ間の接続を銅管によって行うことで,背圧載荷時の配管膨張を防ぐことができます.また,使用するバルブ類はフェルールタイプのものを使用することで,継手類の密閉性を確保することができるような配慮が施されています.
    • 切替バルブは,元々設置されていた場所に置き換える格好になるため,バルブとバルブを繋ぐ銅管経路の長さを同じ(図142)ものにする必要があります.パイプカッターで切り出した銅管は,イキナリ締め込まず,一度仮組して,制御盤への納まりを確認してから本設置します.後々のメンテナンスを考えて,引っ掛かりが無いように,ピタッと全体がはまるまで,銅管の長さを少しづつ調整すると良いでしょう.
  • その他のバルブは下部背圧槽の時と同様です.
     
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    141.全部新品の方達です142.元の銅管の長さを測定143.1/4銅管の切断144.銅管,継手類組込み後の様子

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    145.制御盤へ取付完了(裏側より)146.これまた全部新品の方達です147.継手類組込み後の様子148.制御盤へ取付完了

添付ファイル: fileE53.jpg 9件 [詳細] fileE52.jpg 14件 [詳細] fileE51.jpg 12件 [詳細] fileE50.jpg 10件 [詳細] fileE49.jpg 9件 [詳細] fileE48.jpg 9件 [詳細] fileE47.jpg 9件 [詳細] fileE46.jpg 10件 [詳細] fileE45.jpg 26件 [詳細] fileE44.jpg 31件 [詳細] fileE43.jpg 25件 [詳細] fileE42.jpg 25件 [詳細] fileE41.jpg 30件 [詳細] fileE40.jpg 26件 [詳細] fileE39.jpg 28件 [詳細] fileE38.jpg 29件 [詳細] fileE37.jpg 24件 [詳細] fileE36.jpg 23件 [詳細] fileE35.jpg 37件 [詳細] fileE34.jpg 34件 [詳細] fileE33.jpg 28件 [詳細] fileE32.jpg 22件 [詳細] fileE31.jpg 25件 [詳細] fileE29.jpg 28件 [詳細] fileE30.jpg 28件 [詳細] fileE28.jpg 28件 [詳細] fileE27.jpg 30件 [詳細] fileE26.jpg 29件 [詳細] fileE25.jpg 32件 [詳細] fileE24.jpg 29件 [詳細] fileE23.jpg 28件 [詳細] fileE22.jpg 30件 [詳細] fileE21.jpg 26件 [詳細] fileE20.jpg 26件 [詳細] fileE19.jpg 26件 [詳細] fileE18.jpg 29件 [詳細] fileE17.jpg 30件 [詳細] fileE16.jpg 27件 [詳細] fileE15.jpg 27件 [詳細] fileE14.jpg 28件 [詳細] fileE13.jpg 26件 [詳細] fileE12.jpg 35件 [詳細] fileE11.jpg 32件 [詳細] fileE10.jpg 34件 [詳細] fileE09.jpg 29件 [詳細] fileE08.jpg 27件 [詳細] fileE07.jpg 25件 [詳細] fileD95.jpg 54件 [詳細] fileE06.jpg 45件 [詳細] fileE05.jpg 48件 [詳細] fileE04.jpg 45件 [詳細] fileE03.jpg 44件 [詳細] fileE02.jpg 40件 [詳細] fileE01.jpg 40件 [詳細] fileD94.jpg 48件 [詳細] fileD93.jpg 41件 [詳細] fileD92.jpg 50件 [詳細] fileD91.jpg 43件 [詳細] fileD90.jpg 46件 [詳細] fileD86.jpg 44件 [詳細] fileD89.jpg 46件 [詳細] fileD88.jpg 41件 [詳細] fileD87.jpg 46件 [詳細] fileD85.jpg 46件 [詳細] fileD84.jpg 45件 [詳細] fileD83.jpg 49件 [詳細] fileD82.jpg 41件 [詳細] fileD81.jpg 50件 [詳細] fileD80.jpg 41件 [詳細] fileD79.jpg 46件 [詳細] fileD78.jpg 46件 [詳細] fileD77.jpg 41件 [詳細] fileD76.jpg 45件 [詳細] fileD75.jpg 43件 [詳細] fileD74.jpg 41件 [詳細] fileD73.jpg 44件 [詳細] fileD72.jpg 44件 [詳細] fileD71.jpg 42件 [詳細] fileD70.jpg 40件 [詳細] fileD69.jpg 38件 [詳細] fileD68.jpg 44件 [詳細] fileD23.jpg 87件 [詳細] fileD67.jpg 88件 [詳細] fileD66.jpg 94件 [詳細] fileD65.jpg 84件 [詳細] fileD64.jpg 113件 [詳細] fileD62.jpg 90件 [詳細] fileD63.jpg 95件 [詳細] fileD61.jpg 82件 [詳細] fileD60.jpg 86件 [詳細] fileD59.jpg 150件 [詳細] fileD58.jpg 96件 [詳細] fileD57.jpg 115件 [詳細] fileD56.jpg 152件 [詳細] fileD55.jpg 101件 [詳細] fileD54.jpg 104件 [詳細] fileD53.jpg 114件 [詳細] fileD52.jpg 146件 [詳細] fileD50.jpg 115件 [詳細] fileD51.jpg 110件 [詳細] fileD49.jpg 124件 [詳細] fileD48.jpg 123件 [詳細] fileD47.jpg 115件 [詳細] fileD46.jpg 120件 [詳細] fileD45.jpg 124件 [詳細] fileD44.jpg 108件 [詳細] fileD43.jpg 142件 [詳細] fileD42.jpg 117件 [詳細] fileD41.jpg 134件 [詳細] fileD38.jpg 127件 [詳細] fileD40.jpg 114件 [詳細] fileD39.jpg 111件 [詳細] fileD37.jpg 146件 [詳細] fileD36.jpg 109件 [詳細] fileD35.jpg 140件 [詳細] fileD34.jpg 120件 [詳細] fileD33.jpg 123件 [詳細] fileD32.jpg 125件 [詳細] fileD31.jpg 119件 [詳細] fileD30.jpg 120件 [詳細] fileD29.jpg 124件 [詳細] fileD28.jpg 105件 [詳細] fileD27.jpg 131件 [詳細] fileD26.jpg 131件 [詳細] fileD25.jpg 117件 [詳細] fileD24.jpg 114件 [詳細] fileD22.jpg 163件 [詳細] fileD21.jpg 140件 [詳細] fileD20.jpg 144件 [詳細] fileD19.jpg 135件 [詳細] fileD17.jpg 144件 [詳細] fileD18.jpg 140件 [詳細] fileD16.jpg 163件 [詳細] fileD15.jpg 157件 [詳細] fileD14.jpg 154件 [詳細] fileD13.jpg 158件 [詳細] fileD12.jpg 178件 [詳細] fileD11.jpg 150件 [詳細] fileD10.jpg 157件 [詳細] fileD09.jpg 154件 [詳細] fileD08.jpg 162件 [詳細] fileD07.jpg 151件 [詳細] fileD06.jpg 160件 [詳細] fileD05.jpg 165件 [詳細] fileD04.jpg 203件 [詳細] fileD03.jpg 155件 [詳細] fileD02.jpg 164件 [詳細] fileD01.jpg 154件 [詳細] fileC05.jpg 174件 [詳細] fileC04.jpg 166件 [詳細] fileC03.jpg 168件 [詳細] fileC02.jpg 163件 [詳細] fileC01.jpg 165件 [詳細] fileB26.jpg 179件 [詳細] fileB25.jpg 181件 [詳細] fileB23.jpg 197件 [詳細] fileB24.jpg 183件 [詳細] fileB22.jpg 216件 [詳細] fileB21.jpg 181件 [詳細] fileB20.jpg 187件 [詳細] fileB19.jpg 193件 [詳細] fileB18.jpg 181件 [詳細] fileB17.jpg 167件 [詳細] fileB16.jpg 206件 [詳細] fileB15.jpg 193件 [詳細] fileB14.jpg 188件 [詳細] fileB13.jpg 204件 [詳細] fileB12.jpg 189件 [詳細] fileB11.jpg 196件 [詳細] fileB10.jpg 198件 [詳細] fileB09.jpg 187件 [詳細] fileB08.jpg 188件 [詳細] fileB07.jpg 197件 [詳細] fileB06.jpg 193件 [詳細] fileB05.jpg 186件 [詳細] fileB04.jpg 183件 [詳細] fileB03.jpg 232件 [詳細] fileB02.jpg 182件 [詳細] fileB01.jpg 194件 [詳細] fileA13.jpg 197件 [詳細] fileA12.jpg 204件 [詳細] fileA11.jpg 190件 [詳細] fileA10.jpg 203件 [詳細] fileA09.jpg 196件 [詳細] fileA08.jpg 203件 [詳細] fileA05.jpg 199件 [詳細] fileA04.jpg 248件 [詳細] fileA01.jpg 243件 [詳細] fileA07.jpg 216件 [詳細] fileA06.jpg 204件 [詳細] fileA03.jpg 254件 [詳細] fileA02.jpg 221件 [詳細]

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