大規模斜面模型実験（平成21年11月）

大規模斜面模型崩壊実験(平成21年11月16～20日)†

　「裏山のがけは大丈夫だろうか？」そんな不安に駆られる人々を災害から救うべく，我々地盤研と(独)防災科学技術研究所は共同で斜面の安全について研究を行っています．今年度はDr高田とM1松本がつくば市にある防災科研で本研究室Dr.OBの酒井氏と東京都消防庁から出向されている植竹氏の指導のもと実験を行わさせて頂きました．
　斜面の安全には興味が無いのか！？豊田先生は，最終日のしかも一瞬だけ参加することのことです．まったく，けしからん（--メ）

施設編†

　防災科研が所有する大型降雨実験施設（降雨範囲：45m × 72m、降雨強度：15-200mm/hr）を利用して，豪雨条件下における斜面崩壊実験が可能になります。本実験では表層崩壊をターゲットとした斜面模型（高さ3.5m、傾斜30 度、層厚0.5m、幅1.5m、斜面長6m）を利用して斜面崩壊に及ぼす降雨の影響を調べる実験を行います．

(独)防災科学技術研究所	宿泊施設	大型降雨実験施設	斜面模型用土槽

斜面作製編†

　斜面作製は，重機の使用や熟練した技術が必要なため地元の業者さんの力を借りて行います．模型地盤は昨年度と同様で，つくば山近傍で採取したまさ土です．なお，「測定器具の破損=処刑」を宣告された松本は遠くから望遠レンズで斜面が出来上がるのを見守ります．唯一の活躍は土を斜面上部に運ぶ際のバケツリレーだけでしょうか．

極秘資料	ユンボ大活躍	まさ土を人力で締め固めます	密度管理
やっと中盤	豊田准教授の教え子会談	天井には降雨装置があります	完成間近
8時間格闘のすえ完成	人が小さく見えます	コンピュータによる計測	試料の残骸

予備降雨編†

　防災科研が所有する「お天気マシ～ン（雨）」によって雨が斜面に降り注ぎます．外はすがすがしい晴れ模様にもかかわらず実験室内は雨マークです．
　本日の実験は予備降雨実験です．降雨履歴を受けた斜面を想定して15mm/hで約4時間雨を降らせました．昨年度行った実験の比較ケースとして，今年度は斜面下端部に排水工を施してその効果を見る試験を行います．斜面下部からの排水量は雨量計を用いて測定･･･のはずでしたが，排水量があまりに多く，まさかのオーバーフロー．これには一同「浅はかだった」と反省．自動観測可能な雨量計に変わって，メスシリンダーでの人力観測作戦に変更です．労力を惜しまず測定したデータが良い結果をもたらすと信じ，地盤研はがんばるのです．

外はいいお天気	実験室のドアを開けると･･･	ザーザー降り	カミナリ様！？
実験の様子	オーバーフロー寸前	人力観測	自動観測に切り替え

本降雨編†

　防災科研での降雨実験も佳境を迎えました．降雨強度50mm/hの大雨を降らせての実験です．ん･･･いいタイミングでやってきました．豊田准教授登場です．主役はいいところで現れますね．
　さて，予想では2時間ほどで崩壊するはずの斜面がまったく崩れるそぶりを見せません．排水の効果が出ているようです．降雨の影響で次第に表面が侵食されてきました．取り付けられた計測器たちが表層とともに崩れていきます．ムービーのバッテリーが切れます．豊田准教授の興味が冷めていきます．どうやら強制終了のようですね．
　想像と違った破壊モードで終了となりましたが，多くの興味深いデータが得られました．今後は，模型試験の結果に室内試験や浸透流解析を組み合わせて研究を行っていきます．内容が某災研に被っているような気がしてなりませんが･･･

やっと到着	状況説明中	本降雨前の斜面	大雨の中計測
学生は雨の中	大人たちの足元に注目	侵食されています	だだ漏れ･･･
計測器無力なり	そろそろ止めよか	実験終了後の斜面	雨がやんでから･･･

崩壊実験ムービー!!†

• 崩壊時の動画を公開致します．今年度は侵食崩壊が主で，あまり面白く無い動画でしたので，昨年度行った表層崩壊を想定したケースの結果を公開します．
• ちなみに，昨年度の試験条件は，予備降雨で浸透した雨水を蓄積させたまま（非排水条件）で，今年度は雨水の排水を許したまま（排水条件）で本降雨を行いました．
  • 配信動画はMP4形式です
  • 音量にご注意下さい!!

研究成果†

• 2011年度修士論文　降雨による斜面崩壊に与える地下水位の影響
• 2008年度修士論文　降雨による斜面崩壊に及ぼす降雨履歴の影響
• 松本陽介，豊田浩史，高田晋，酒井直樹：斜面下端部の排水条件が降雨による斜面崩壊に及ぼす影響，第45回地盤工学研究発表会発表講演集（愛媛），pp. 1721-1722，2010. 【論文はこちら】
• 根岸瑞希，豊田浩史，松本陽介，高田晋，酒井直樹：斜面下端部に設けた排水機構が降雨による斜面崩壊に及ぼす効果の検討，第28木学会関東支部新潟会研究調査発表会論文集，2010．【論文はこちら】