長岡技術科学大学 環境・建設系 地盤工学研究室(担当:豊田浩史准教授)

 ・調査活動:平成19年7月16〜26日の調査記録はこちら
         平成19年8月9日14日
         平成19年9月1,2日New!!


調査概要−平成19年8月9日

 ・調査日:平成19年8月9日(木)午前9時〜

 ・調査団員:長岡技術科学大学 環境・建設系准教授 豊田 浩史
         長岡技術科学大学大学院 高田 晋
         日本学術振興会 特別研究員 中村 公一
         ※本調査は社団法人地盤工学会および長岡技術科学大学の派遣要請を請け,調査団として調査活動を実施したものである.

 ・調査地:柏崎市橋場町
       柏崎市西本町2町目水道橋公園
       柏崎市西港町

 ・コメント:液状化現象による被害が多数見られた橋場町の追跡調査とこれまでの調査活動でまだ訪れていない2箇所について調査を行った.
        特に,橋場町と柏崎市西本町2町目水道橋公園については,旧河道の位置と被害の関係について調べるため,調査ポイントを旧河道沿いに絞って調査を行った.

 ・旧河道位置:「陸地測量部作成の2万5千分の1地形図(柏崎,明治44年)」と「1952年米軍撮影の空中写真」を参考に,「平成19年(2007年)新潟県中越沖地震被災地
          の空中写真」へ旧鯖石川河道および旧鵜川河道を書き加えたものである.

橋場町−鯖石川旧河道位置図 西本町−鵜川旧河道位置図



柏崎市橋場町(はしばちょう)

調査ポイント1 旧河道位置図 赤1.憤砂痕確認場所 赤2.擁壁の倒壊 青1.エントランスの亀裂 青2.エントランスの亀裂

緑1.道路の補修痕 緑2.空き地の地割れ 緑3.U字溝の破壊 緑4.車庫の傾斜 緑5.駐車場の被害

 調査ポイント:橋場町10,14,16番地(詳細はリンクのグーグルマップ参照のこと)
 ・調査ポイント赤印−赤1:7月17日の調査で憤砂した砂をサンプリングした箇所(こちらを参照のこと).この箇所では憤砂した砂が多く堆積していた.
 ・調査ポイント赤印−赤2:敷地境界の擁壁の倒壊や電柱の傾斜による被害が発生していた.隆起したアスファルトは取り除かれ砂利が敷設されていた.
                  道路沿いに調査を行ったがこの箇所に被害が集中していた.

 ・調査ポイント青印−青1,2:調査ポイント赤印の隣の区画でも同様にこの箇所に被害が集中していた.

 ・調査ポイント緑印−緑1〜5:空き地には地割れが発生しており,小規模ながら段差が生じていた.この地割れはU字溝,道路にまで達していた.
                    隣の家の車庫部分が空き地側に引き込まれるようにして傾斜していた.
                    道路調査ポイント赤印の2区画隣の区画でも同様にこの箇所に被害が集中していた.



調査ポイント2 旧河道位置図 1.鯖石川左岸堤防被害 2.鯖石川左岸堤防被害 3.鯖石川左岸堤防被害 4.排水溝のずれ

5.駐車場の亀裂 6.建物と地盤の開き 7.建物と地盤の開き 8.道路の亀裂 9.擁壁の倒壊 10.アスファルトの捲れ

11.擁壁の倒壊

 調査ポイント:橋場町17,18番地(図中赤印,詳細はリンクのグーグルマップ参照のこと)
 ・1〜3:鯖石川旧河道付け根部分に相当する左岸堤防に応急復旧している箇所があった.調査当日はすでにボーリング調査を実施していた.
      被害の状況は確認出来なかったが,堤防のすぐそばにある住宅駐車場に大きな亀裂と段差(写真4,5)が生じており,旧河道に沿って地盤沈下が発生し,
      堤防部に亀裂や段差が発生したものと推測する.
 ・6,7:写真4,5の家の北側(堤防側)では,建物基礎と地盤に開きが発生していた.基礎部に被害が見つからなかったため,堤防の変状に引きずられ側方に地盤が
     動いたことが予想される.
 ・9〜11:旧河道沿いに建てられている建物に被害が集中していた.


調査ポイント3 12.建物の傾斜 13.暗渠の突出 14.開運橋全景 15.開運橋左岸橋台部 16.開運橋左岸橋台部

17.開運橋左岸支承部 18.橋台押さえ盛土 19.水道橋全景 20.水道橋取付部 21.水道橋の被害

 調査ポイント:鯖石川左岸開運橋付近(詳細はリンクのグーグルマップ参照のこと)
 ・15,16:開運橋左岸橋台部(調査ポイント青印)にクラックが発生.クラックの幅約2mm.
 ・17:地震動によるものかどうかは断定できないが,支承部の一部のボルトが緩んでいた.
 ・18:橋台が設置されている法面の押さ盛土が川側に約100mmずれていた.
 ・19〜21:開運橋の東側に架かる水道橋(調査ポイント緑印)では,堤防堤体内を通る暗渠のコンクリート製の蓋が持ち上げられていた.
       水道管本体の損傷が軽微であることと,取付部において水道管架台に損傷が見られないため,堤防部全体が沈下したことによる被害であると推察する.



柏崎市西本町2町目(にしほんちょう)水道橋公園

調査ポイント 旧河道位置図 22.旧河道に架かる橋 23.地割れ 24.通路の亀裂 25.地割れ

26.遊歩道の段差 27.公園内段差 28.公園内段差 29.水道橋公園の説明

 調査ポイント:水道橋公園内(図中赤印,詳細はリンクのグーグルマップ参照のこと)
 ・22:国道352号線新橋交差点近くに旧河道に架けられていた長さ4m程度の橋が残されていた.現在は,橋としての機能を失い歩道の一部として利用されていた.
 ・23〜26:写真22の旧河道に架けられていた橋を起点として,三日月形の公園内長手方向に連続した地割れや遊歩道の段差が発生していた.
 ・27:公園内に設置されている遊具は使用禁止になっていた.
 ・28:花壇を貫通し煉瓦敷きの遊歩道に明瞭な段差が連続して発生していた.旧河道部分の地盤沈下によるものであることが容易に推測できる.



柏崎市西港町(にしみなとちょう)

調査ポイント 30.急斜面の被害 31.西永寺の被害 32.警告看板 33.西永寺の被害 34.急斜面の被害

35.急斜面の被害 36.エントランスの被害 37.応急措置 38.駐車場の被害 39.駐車場の被害 40.伸縮計の設置

41.市道 42.急斜面の被害 43.急斜面の被害

 調査ポイント:西港町7,8番地,西本町2丁目西永寺付近(図中赤印,詳細はリンクのグーグルマップ参照のこと)
 ・30,31:西永寺北西の急斜面の変状によって斜面沿いに建てられている住宅に被害が発生していた.
 ・32:急斜面沿いの宅地(西港町側低地)は急傾斜地崩壊危険区域に指定されていた.
 ・34〜36:写真30,31同様,斜面崩壊が発生していた.斜面の変状に伴って宅地地盤が押されエントランス部が圧縮される被害が発生していた.
 ・37,40:7月17日の調査で斜面崩壊箇所(こちらを参照のこと)では押さえ盛土やブルーシートによる応急対策工と伸縮計による監視がなされていた.
 ・38,39:写真37の崩壊斜面奥に見える建物の擁壁が傾斜したため,駐車場に設置されていたコンクリート床板が圧縮され座屈していた.
 ・41:市道沿いの建物では,急斜面の変状に起因した被害(写真36)が多数見られた.



調査概要−平成19年8月14日

 ・調査日:平成19年8月14日(月)午前10時〜

 ・調査団員:長岡技術科学大学 環境・建設系准教授 豊田 浩史
         明治コンサルタント株式会社 技術統括部専門副部長 島内 哲哉
         明治コンサルタント株式会社北陸支店 技術部調査課課長 佐藤 博文
         長岡技術科学大学大学院 高田 晋
         日本学術振興会 特別研究員 中村 公一
         ※本調査は長岡技術科学大学の派遣要請を請け,長岡技術科学大学調査団として調査活動を実施したものである.

 ・調査地:柏崎市米山町聖ケ鼻斜面崩壊
       柏崎市笠島斜面崩壊
       柏崎市青海川駅斜面崩壊
       柏崎市椎谷観音岬斜面崩壊
       柏崎市西山町長嶺
       長岡市大積

 ・コメント:自然斜面の崩壊箇所に的を絞り,青海川,椎谷観音岬および大積の斜面崩壊箇所の追跡調査と未調査となっていた米山町聖ケ鼻および
       笠島斜面崩壊箇所の調査を実施した.



柏崎市米山町聖ケ鼻(よねやまちょうひじりがはな)斜面崩壊

調査ポイント 1.崩壊土砂 2.道路の段差 3.道路の段差 4.傾斜した地層構造 5.傾斜した地層構造

6.地層構造 7.走向傾斜測定 8.展望広場の滑落 9.斜面崩壊 10.斜面崩壊 11.斜面崩壊

12.滑落した道路 13.滑落崖 14.側崖 15.崩壊した岩塊 16.すべり面 17.すべり面

18.その他写真

※この写真はFLASHを使用しております.

 調査ポイント:米山トンネル海側聖ケ鼻(図中赤印,詳細はリンクのグーグルマップ参照のこと)
 ・1:国道8号線から展望広場に向かう市道の東側斜面が表層崩壊しており崩壊土砂により道路が完全に閉塞されていた.
 ・2,3:展望広場に向かう道路は写真のように亀裂・段差が生じていた.
 ・5,6:展望広場直近の東側斜面では,傾斜した地層構造を見ることができる露頭が存在した.
 ・13,14:滑落崖,側崖ともに同様の地層構造であることが分かる.すべり面を成す泥岩層の上部に1cm程度の砂岩のような層が介在していた.
      泥岩層へ水を伝える役目を担っているのではないかと考えられる.
 ・15:崩壊した斜面の崩壊土砂は一部海まで到達していた.また,崩壊土砂の中には非常に大きなブロック状の岩塊が多数点在していた.
 ・16,17:明瞭なすべり面が確認された.すべり面を構成する泥岩層の一部が露出している箇所でサンプリングを行った.



柏崎市笠島(かさしま)斜面崩壊

調査ポイント 19.斜面崩壊全景 20.崩壊土砂 21.滑落崖 22.滑落崖 23.走向傾斜

 調査ポイント:笠島海水浴場(図中赤印,詳細はリンクのグーグルマップ参照のこと)



青海川駅(おうみがわえき)斜面崩壊

調査ポイント 24.防護壁 25.崩壊斜面全景 26.滑落崖地層構造 27.湧水 28.地層構造

29.側崖地層構造 30. 31. 32.泥濘化した泥岩 33.鉄道復旧工事 34.鉄道復旧工事

 調査ポイント:青海川駅構内(図中赤印,詳細はリンクのグーグルマップ参照のこと)
 ・.



柏崎市椎谷(しいや)観音岬斜面崩壊

調査ポイント 35.保護工の剥落 36.保護工の剥落 37.保護工の剥落 38.崩壊土砂撤去 39.崩壊土砂撤去

40.表層崩壊 41.表層崩壊 42.表層崩壊

 調査ポイント:(図中赤印,詳細はリンクのグーグルマップ参照のこと)
 ・35〜37:調査ポイントの斜面崩壊が続く山側斜面の柏崎寄りに築造されている吹き付け保護工の一部が剥落していた.
 ・38,39:崩壊土砂が片側1車線分撤去されていた.雨による土砂の流出を防ぐためにトンパックで押さえられていた.



柏崎市西山町長嶺(ながみね)斜面崩壊

調査ポイント 43.崩壊土砂・倒木 44.斜面崩壊全景 45.東側斜面崩壊 46.東側斜面崩壊 47.西側斜面崩壊

48.西側斜面崩壊 49.すべり面 50.すべり面 51.走向傾斜測定 52.地層構造 53.地層構造

54.崩壊土砂 55.倒木

 調査ポイント:県道373号線から山側に入った付近(図中赤印,詳細はリンクのグーグルマップ参照のこと)
 ・43:崩壊土砂の上に倒木が幾重にも折り重なっていた.崩壊土砂は雨水を多く含みぬかるんだ状態となっていた.
 ・44:斜面崩壊は写真の左手側(便宜上西側とする)と右手側(便宜上東側とする)2箇所で発生していた.
 ・45,46:東側の斜面崩壊箇所は,足場が見つからなかったため接近することができなかった.西側同様すべり面が見える(写真中の倒木の奥).
 ・49,50:明瞭なすべり面が確認された.すべり面を構成する泥岩層の一部が露出している箇所でサンプリングを行った.
 ・51:走向方向 N58E,傾斜角 32°
 ・52:すべり面の一部に露出した箇所.傾斜した地層構造を有することから流れ盤地形であることが推測される.



長岡市大積(おおづみ)斜面崩壊

調査ポイント 56.斜面復旧状況 57.植生基材吹付工 58.滑落した歩道 59.黒川 60.黒川

61.滑落した歩道 62.排水工 63.排水工 64.傾斜計 65.伸縮計 66.監視カメラ

67.吹き付け 68.ラス網 69.斜面復旧状況 70.斜面復旧状況 71.斜面頂部 72.崩壊斜面の背面

 調査ポイント:国道8号線千本交差点付近(図中赤印,詳細はリンクのグーグルマップ参照のこと)





調査概要−平成19年9月1,2日

 ・調査日:平成19年9月1日(土)午後1時〜,2日(日)午前9時〜

 ・調査団員:長岡技術科学大学調査班
         長岡技術科学大学 環境・建設系准教授 豊田 浩史
         長岡技術科学大学大学院 高田 晋,樺澤 駿治,小林 信治,中村 幸太郎,阪東 聖人
         日本学術振興会 特別研究員 中村 公一
         ※本調査は社団法人地盤工学会の派遣要請を請け,5大学・1高専合同の調査団として調査活動を実施したものである.
         ※調査メンバー:東京大学,東京電機大学,関東学院大学,東京理科大学,長岡工業高等専門学校

 ・調査地:柏崎市橋場町

 ・コメント: 今回は,5大学・1高専が合同で調査団を結成し,液状化災害によって家屋や道路に被害が発生した地域に焦点を絞り調査を行いました.
       対象とする地域の中で技大班は,地震発生以降何度か調査に訪れたことがある「橋場町」で調査を行うことになりました.
        本調査の最大の特徴として,実際に液状化による被害が発生した箇所で宅地地盤の調査方法として最もポピュラーであるスウェーデン
       式サウンディング試験を実施することにあります.この試験によって地盤の軟硬および地盤種別を推定することができ,液状化の発生要
       因や家屋や道路の被害状況との関連性を見出す足がかりとすることができます.
        調査当日は天気に恵まれましたが,技大班が用いた試験装置が完全手動式であったため,全員でグッタリして帰りました.また,畑や
       庭先での試験だったため全員蚊にさされまくりました.



調査ポイント 1.調査状況 2.測定開始 3.自沈中 4.その他道具 5.垂直を確認

6.回転貫入 7.狭隘な箇所で測定 8.測定地点測定 9.引抜き状況 10.試験後 11.夜の打合せ

12.夜の打合せ 13.結果サンプル

 調査ポイント:橋場町全域(詳細はリンクのグーグルマップ参照のこと)
 ・1:住民の協力を得て庭や畑の中で液状化による憤砂が発生した場所を提供して頂いた.その中でなるべく平坦な場所を選定し調査地点として決定した.
 ・2〜4:技大班は,載荷装置としておもりによる載荷,回転装置として人力による完全手動式のスウェーデン式サウンディング試験(以下,SS試験)を実施した.
 ・5:クランプにおもりを載せた状態.ロッドに載荷したおもりの重量と地盤の状態により自沈するスピードが異なる.
 ・6:直径2cmのロッドにパイプレンチを固定し,水準器を見ながら回転貫入させた.100kgのおもりを載せた状態でロッドの垂直を保つために二人がかりで行った.
 ・7:全自動式のSS試験と異なり手動で試験を行うため,人間二人位の狭いスペースがあれば十分試験が可能となる.
 ・8:調査地点はテープやハンディGPSを用いて正確に割り出した.
 ・9:半回転数が5cmあたり50回を超えるか,または用意したロッドを使い切るかを終了条件とし,試験終了後にロッドとスクリューポイントを抜き出した.
    試験後のロッドには地下水を含んだ土が付着していた.付着物の水分で地下水位の高さを判定した.また,φ7mm×2mの丸綱を試験孔に挿入し,地下水位の確認を行った.
 ・11,12:調査実施後,夕方6時30分から松波の体育館を借り,各調査班の調査報告と翌日の作戦会議を実施した.
 ・13:SS試験で得られたデータを基に,図のように深さ方向の地盤の軟硬と地盤種別をまとめた.試験結果と考察は今後,学会で発表される予定である.






(連絡先)長岡技術科学大学 環境・建設系 豊田浩史 TEL 0258-47-9619
(作成)長岡技術科学大学大学院 高田晋 TEL/FAX 0258-47-9644
(地図作成)日本学術振興会 特別研究員 中村 公一